ライブドアの堀江貴文社長が、とうとう逮捕という事態になってしまいました。
マスコミ始め、堀江社長については様々な意見が飛び交っていますが、同じネット業界で仕事をする者として少し私の意見を書いてみたいと思います。
堀江貴文社長が法に触れることを行っていたのかどうかは、私としては判断しかねますのでコメントは差し控えます。
その代わり、ここでは「ネット業界の経営者」として、ライブドア堀江社長の考え方について少し分析してみましょう。
堀江貴文氏のビジネスモデルについて他のIT企業と比較して分析することで、堀江氏がなぜこのような問題を引き起こしてしまったのか、ヒントが掴めると思います。
堀江貴文氏は、もともと「オン・ザ・エッジ」という会社を経営していました。インターネットが流行し始めた頃で、主として企業向けのホームページ制作や、システム制作をメインにした会社でした。堀江社長は創業当時は、主としてプログラマーの仕事をメインにしていたようで、技術力も高く、納期も早いと評判だったそうです。
また当時、堀江貴文社長がサイバーエージェントの藤田社長の依頼で、「クリック保証型インターネット広告事業」のシステム開発を行ったのも有名な話です。
起業間もない藤田氏は、インターネット広告の道で色々と試行錯誤を続けていたそうですが、その時に出会ったのが堀江社長。当時、どのシステム会社に依頼しても相手にしてくれなかったという、技術的に非常に難しい「クリック保証型システム」を、天才「プログラマー」堀江氏が簡単に作り上げたのが、両者の付き合いのはじまりだそうです。
ちなみに、アメリカのベンチャー企業では、技術者上がりで大成した経営者が少なくありません。
マイクロソフト社のビルゲイツ、デル社のマイケルデル、グーグル社のサーゲイブリン、等々、枚挙にいとまがありません。
「テクノロジー」をコアにして急成長を遂げたベンチャー企業の場合は、創業者が社内の「No1技術者」として会社を牽引して来た訳ですから、その創業者が会社の成長とともにそのまま経営者として会社を引っ張っていく、という図式になる訳です。
日本で言えば、ホンダの本田宗一郎氏や、京セラの稲盛和夫氏も、このパターンでしょうか。
さて堀江貴文氏の場合、非常に高いスキルを持った技術者だったにも関わらず、あまり「特定のテクノロジー」を武器に企業を成長させようとはしなかったようです。
通常、IT系のベンチャー企業は、特定のコアテクノロジーを武器に成長シナリオを描きます。
例えば海外では、
Yahoo! : ディレクトリ検索
Google : PageRankに基づく新検索ロジック
マイクロソフト : MS-DOS
eBay : マッチング技術によるオークション
amazon : 書籍+顧客データベースによる書籍販売
という風に、テクノロジーを武器に、自社の「コアコンピタンス」を明確にして、競争激しいネットビジネスで勝負して来ています。
日本でも、
楽天 : 低価格な店舗管理システムによるネットモール
サイバーエージェント : クリック型保証システムによるネット広告
GMO : ダイヤルQ2を使ったプロバイダーサービス
などなど、創業時は「コア技術」をもとに事業拡大を図った企業が少なくありません。
ところが堀江貴文社長の場合、幸か不幸かこういうビジネスモデルを選ばすに、成長を遂げてしまいました。
堀江社長がライブドアに社名変更する前は、「オン・ザ・エッジ」、あるいは「エッジ」という社名で、ホームページ制作やネットのコンサルティングを主なビジネスとしていました。
このホームページ制作というのは、当時はかなりの売り手市場でしたから、あまり苦労しなくても仕事が取れていました。
前述の「新技術をコアにしたベンチャー企業」の場合は、そのコアシステムを武器に必死に市場開拓をして行った訳です。一方、ホームページ制作業界は、それほど苦労することなく成長することができました。
そのため他社との差別化や、コアコンピタンスの明確化ということをあまり意識せずに、ライブドアは企業として今まで成長してきて「しまった」のではないでしょうか。
よく「ライブドアは何の会社か分からない」という話がでますが、これは上記のような成り立ちのため、会社としての「コア」が明確になっていないことに由来すると思います。
経済用語で言えば、「核となる事業領域」を明確にせずに成長して来たため、「何の会社か分からない」という声が出て来るわけです。
恐らく堀江社長は、「核となる事業領域」をあえて明確にせず、むしろ「売上があがるのであれば何でもよい」という明確なポリシーを持っていたのかもしれません。特定の技術や特定の事業に縛られるのではなく、「コングロマリット企業」を目指して成長しようとしていたような気がします。
結果的に、今回こうした路線がマイナスとなってしまった訳ですが、経営者として堀江貴文氏を見た場合、この「成長モデルの違い」が他の経営者とは違っていた、というのが、今回のケースの背景にあるのではないでしょうか。
特定の事業領域、あるいは特定のコア技術をもとに事業拡大を図る、通常のIT企業。
一
方、そうしたビジネスモデルを否定し、買収企業のシナジー効果を期待してコングロマリットを目指した堀江社
長。
そんな図式だったのかもしれません。